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睡眠について

睡眠の仕組み:2つのメカニズムと種類

私たちが眠りにつく背景には、大きく分けて2つの制御システムが関わっています。

1.脳と体の疲れによる「睡眠欲求」
1つ目は、日中の活動による疲労や睡眠不足によって、体内に「睡眠物質」が溜まっていくメカニズムです。シンプルに言えば、「動いて疲れたから眠る」という反応です。
この仕組みは、カフェインによる覚醒作用や、抗ヒスタミン薬、睡眠導入剤などの外部成分の影響を強く受けるのが特徴です。

2.体内時計による「リズムの調整」
2つ目は、サーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれる体内時計に従うメカニズムです。こちらは疲れの有無にかかわらず、「夜という時間帯になったから眠る」という本能的な働きです。
この調整には、体内時計を司るホルモンである「メラトニン」が重要な役割を果たしています。

睡眠の質を形作る「2つの眠り」

睡眠は、質の異なる「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」が交互に現れることで構成されています。この1サイクルは約100分間で、一晩のうちに数回繰り返されます。朝に近づくにつれて、深い眠りが減り、レム睡眠の時間が増えていくのが一般的な流れです。

種類主な役割特徴
ノンレム睡眠脳の休息睡眠の前半に多く現れ、日中酷使した大脳を深く休ませます。
レム睡眠体の休息全身の筋肉が緩み、体を休める一方で、脳は比較的活発に動いています。夢を見やすく、起床に向けた準備段階でもあります。

子どもの睡眠について

子どもの夜型化と、健やかなリズムを取り戻すためのポイント

現代社会において、子どもの夜更かしは深刻な課題となっています。厚生労働省の調査によると、22時以降に就寝する3歳児の割合は、1980年の約20%から1990年には約35%へと急増しました。

また、富山県での実態調査(2002年)からは、学年に応じて以下のような深刻な影響が見て取れます。

学年別にみる生活リズムの乱れの影響

[小学生]
保護者の生活習慣に影響されやすく、週末の疲れが月曜の欠席や保健室利用につながる傾向があります。日中の集中力低下や、朝からのあくびも目立ちます。

[中学生]
授業中の居眠りや、寝る目的での保健室利用が増加。深夜のSNS利用や朝食欠損、慢性的な頭痛に悩む生徒も少なくありません。

[高校生]
昼夜逆転や遅刻・早退が目立ち、便秘などの消化器症状や情緒不安定、悲観的な訴えが多くなるなど、心身両面への影響が顕著です。

理想的な生体リズムを作る「4つの習慣」

こうした状況を改善するには、光・食事・運動・入浴を意識した生活の再構築が不可欠です。

朝の光と朝食でスイッチを入れる

朝の光は網膜を通じて脳の「主時計」をリセットし、朝食は内臓の「末梢時計」を動かします。また、しっかり噛んで食べる(咀嚼)ことは脳の覚醒を促し、食後の排便は自律神経を日中モードへ切り替える重要な合図となります。

夕方の軽い運動

質の高い眠りには適度な運動が効果的です。散歩などの負担が少ない有酸素運動を、夕方の時間帯に行うのが理想的です。

就寝前の入浴

入浴による「一時的な体温上昇」が、その後のスムーズな入眠を助けます。運動と同様、寝る前に一度体を温めることが快眠の鍵となります。

デジタルデバイスとの付き合い方

近年、スマートフォンやゲームの利用が生活リズムを崩す大きな要因となっています。これらに依存しすぎると、体内時計が後ろにずれ込み、健康的なサイクルが維持できなくなるため、注意が必要です。

子どもの健やかな睡眠リズムを作るための「6つのアクション」

お子さまに質の良い眠りをプレゼントするために、日常生活で取り入れたい具体的なポイントをまとめました。

「入眠の儀式」を習慣にする

パジャマへの着替え、歯磨き、トイレ、そして寝る前の読み聞かせ。毎日決まった流れを作ることで、心と体が自然に「眠るモード」へと切り替わります。

低学年までは「就寝時間」を固定する

特に小学校低学年頃までは、夜21時から21時半までには布団に入るよう時間を固定しましょう。規則正しいリズムが成長を支えます。

日中は積極的に屋外で活動する

同じ「起きている時間」でも、室内と屋外では脳への刺激が大きく異なります。太陽の光を浴びながら体を動かすことで、夜の深い眠りを誘い出します。

「朝ごはん」で体内時計をリセットする

朝食をしっかり摂ることで、お腹の時計(末梢時計)が動き出し、連動して脳のスイッチも入ります。一日のリズムを整える大切な鍵です。

生活動線を「子ども中心」に整える

夕食や入浴のタイミングをできるだけお子さまの就寝時間から逆算して設定しましょう。家族の協力が、スムーズな入眠を助けます。

親が「良いお手本」を見せる

子どもは親の習慣をよく見ています。まずは保護者の方が率先して規則正しい生活を楽しみ、健康的な睡眠習慣を背中で見せてあげてください。

おとなの睡眠について

健やかな眠りを支える「心のホルモン」と食事の習慣

現代社会では、お子さまに限らず大人もスマートフォンやネットへの依存、仕事の過労、人間関係の悩みなど、多大なストレスにさらされています。こうした背景から、多くの方が睡眠に何らかの不安を抱えているのが現状です。

ストレスに負けず、心地よい眠りにつくためには、「癒しのホルモン」と呼ばれるセロトニンを体内でしっかり生成できる習慣づくりが欠かせません。

セロトニンを効率よく作るための「栄養」と「光」

セロトニンを体内で合成するには、その原料となる「トリプトファン」というアミノ酸が必要です。この成分は体内で作り出すことができないため、日々の食事から摂取する必要があります。

[トリプトファンを多く含む食材]
バナナ、牛乳、大豆製品、卵、魚などに豊富に含まれています。

[吸収率を高めるコツ]
ご飯やパンなどの炭水化物と一緒に摂ることで、トリプトファンが脳へ取り込まれやすくなります。

[「光」が睡眠ホルモンへつなげる]
日中に太陽の光を浴びることで、摂取したトリプトファンがセロトニンへと変化します。そして、このセロトニンが夜になると、自然な眠りを誘う「メラトニン(睡眠ホルモン)」の材料となるのです。

専門的な指針に基づいたサポート

当施設(あるいは本稿)では、これらの習慣に加えて、2014年に厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠指針」に基づき、皆さまの快眠習慣をトータルでサポートしてまいります。

健康づくりのための睡眠指針 2014 ~睡眠12か条~

  1. 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
  2. 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
  3. 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
  4. 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
  5. 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
  6. 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
  7. 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
  8. 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
  9. 熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
  10. 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
  11. いつもと違う睡眠には、要注意。
  12. 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

高齢者の睡眠について

私たちの睡眠は、年齢を重ねるごとに刻々と変化していきます。

加齢に伴う自然な変化

年をとるにつれて、体が必要とする睡眠時間は少しずつ短くなっていきます。「8時間は寝なければならない」と過度に時間にこだわる必要はありません。
また、高齢期には「睡眠相前進(早く寝て早く目が覚める)」や、寝たり起きたりを繰り返す「不規則型」のリズムになりやすい傾向があります。

認知症のタイプ別:睡眠に現れる特徴

睡眠学の視点から見ると、認知症の種類によって睡眠の現れ方には明確な違いが見られます。

認知症のタイプ睡眠の特徴と傾向
アルツハイマー型症状が進行するほど「レム睡眠」の割合が減り、入眠からレム睡眠に入るまでの時間が長くなる傾向があります。治療薬(アリセプトなど)には、このレム睡眠を補い、出現までの時間を短縮する働きがあると言われています。
レビー小体型足がむずむずする「レストレスレッグス症候群」や、眠りながら体が動いてしまう「レム睡眠行動障害」を併発しやすいのが特徴です。また、アルツハイマー型に比べて悪夢を見やすいという報告もあります。
血管型生活リズムがバラバラになる「不規則型睡眠リズム障害」や、「睡眠時無呼吸症候群」を伴いやすいのが特徴です。特に無呼吸状態そのものが、血管型認知症を進行させるリスク因子にもなり得ます。
前頭側頭型1日の総睡眠時間が著しく増える一方で、夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」が非常に多く見られるのが特徴です。

対象となる主な疾患

①不眠症

不眠症は、日本人の約5人に1人が悩まされていると言われるほど身近な国民病です。特に加齢とともに増加する傾向にあり、統計的には女性にやや多く見られるのが特徴です。

不眠症の「4つのパターン」

不眠症は症状によって以下の4つに分類されますが、これらが複合的に現れることも少なくありません。

1.入眠困難
布団に入っても、なかなか寝付けない。

2.中途覚醒
夜中に何度も目が覚めてしまい、その後眠れない。

3.早朝覚醒
予定よりずっと早く目が覚めてしまい、再入眠できない。

4.熟眠障害
睡眠時間は確保できているはずなのに、ぐっすり眠った満足感がない。

不眠の原因は、身体的・心理的な要因が複雑に絡み合っていることが多いため、どこに根本的な問題があるのかを見極めることが治療の第一歩となります。

治療の選択肢:薬物療法と非薬物療法

治療には大きく分けて2つのアプローチがあります。

薬物療法(睡眠薬)
即効性が期待できる一方で、自然な睡眠とは質が異なるため、眠りの深さを損なう場合があります。
副作用として日中のふらつきや眠気が残るリスクがあるほか、薬によっては依存が生じ、中断が難しくなるケースもあるため注意が必要です。

【非薬物療法
薬に頼らない方法として、「不眠症に対する認知行動療法」が注目されています。
睡眠に関する誤った認識や生活習慣を整えることで、根本的な改善を目指す心理療法です。
ブーティン式刺激抑制療法、漸進的筋弛緩法、睡眠抑制法などがあります。

②睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に10秒以上の呼吸停止が頻発する病態を指します。具体的には、1時間あたり5回以上、あるいは一晩の睡眠中に合計30回以上の無呼吸状態が確認される場合に診断されます。
この多くは、空気の通り道である「気道」が何らかの理由で塞がってしまうことで起こりますが、稀に脳から呼吸の指令がうまく伝わらなくなるケースも存在します。

気道が塞がる主な要因としては、肥満による喉まわりの脂肪沈着をはじめ、下あごの未発達や扁桃腺の肥大などが挙げられます。
こうした物理的な狭窄がある状態で仰向けに寝ると、重力によって舌の付け根が沈み込み、さらに呼吸を妨げてしまうのです。

見逃せないサインと合併症の危険性

この疾患の代表的なサインは「いびき」です。
気道が狭くなると呼吸時の抵抗が大きくなり、それがいびきとなって現れます。
特に、大きないびきが突然止まり、しばらくして再び激しくかき始めるといった不規則なパターンは、無呼吸の典型的な特徴です。

無呼吸状態が続くと体内は慢性的な酸素不足に陥り、心臓や脳をはじめ全身の臓器に大きな負担がかかります。
その結果、糖尿病や心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる疾患のリスクが著しく高まります。
また、夜間に十分な休息がとれないため、日中に強烈な眠気や頭痛、吐き気に襲われることも少なくありません。
特に運転中や作業中の突発的な居眠りは重大な事故に直結するため、早急な対応が求められます。

治療の選択肢と日常生活での対策

治療において非常に効果的とされているのが「CPAP(シーパップ)」療法です。
これは鼻に装着したマスクから加圧した空気を送り込み、気道を広げた状態を維持する方法で、機器のレンタルも可能です。
そのほか、マウスピースを用いて下あごを前方に固定し、物理的に空気の通り道を確保する手法も選ばれます。
なお、原因が扁桃腺肥大や鼻の疾患にある場合は、耳鼻咽喉科での専門的な治療が必要になることもあります。

日常生活においては、まずは最大の発症要因である肥満を解消するために、規則正しい食生活と運動を習慣づけることが重要です。
また、寝る姿勢を横向きにするだけでも気道の閉塞を軽減できる場合があるため、日々の工夫を取り入れながら、質の高い睡眠を取り戻していきましょう。

③睡眠リズム障害(極端な夜更かしや朝寝坊)

私たちの1日は24時間ですが、人間の体内時計はそれよりも少し長く、約25時間の周期で刻まれていると言われています。
この毎日の「1時間のズレ」を修正し、社会のリズムに合わせるために不可欠なのが「朝の光」です。

朝、目から強い光が入り脳に刺激が伝わることで、体内時計はリセットされ「睡眠から覚醒」へと切り替わります。
そして、このリセットから約14〜16時間後に自然な眠気が訪れるよう、体は精巧にコントロールされています。
しかし、何らかの理由でこの調整がうまくいかなくなると、生活に支障をきたす「睡眠リズム障害」を引き起こしてしまいます。

世代や環境で異なる3つの睡眠パターン

睡眠リズム障害には、主に3つの典型的なパターンが存在します。

まず、思春期から青年期に多く見られるのが「睡眠相後退症候群(DSPS)」です。
深夜までスマートフォンやパソコン、テレビなどの強い光に触れ続けることで、体内時計のリセットが遅れ、極端な夜更かしと朝寝坊が定着してしまいます。
夜に眠気が来ないために朝起きるのがさらに困難になるという、悪循環に陥りやすいのが特徴です。

対照的に、高齢の方に多く見られるのが「睡眠相前進症候群(ASPS)」です。
退職後の環境変化や体力の低下から、夜の早い時間に就寝し、まだ周囲が暗いうちから活動を始めてしまうパターンです。
早寝によって翌晩もさらに早い時間に眠くなるという、リズムの前倒しが起こります。

そして、盲目の方や、光刺激・社会的刺激の少ない環境(引きこもりや特定の研究生活など)で過ごす方に現れやすいのが「非24時間型リズム障害(Non-24)」です。
体内時計をリセットするきっかけを失うことで、人間本来の「1日25時間」の周期に従って生活するようになります。
その結果、毎日1時間ずつ就寝と起床の時間が後ろにずれていくという、特有の現象が起こります。

治療とリズムの立て直し

治療にあたっては、まずご自身の睡眠パターンを正確に把握することから始めます。
その上で、生活習慣の指導や薬物療法に加え、高照度光療法と呼ばれる、人工的な強い光を用いて体内時計を強制的にリセットする治療を組み合わせて行います。

もし自力での改善が困難なほどリズムが著しく乱れている場合には、専門の環境で2週間から1ヶ月程度の短期入院を行い、集中的に生活習慣を立て直すという選択肢もあります。

④過眠症(ナルコレプシー、特発性過眠症、周期性過眠症)

過眠症は不眠症とは逆に寝すぎてしまう病気です。過眠症は大きく分けて特発性過眠症とナルコレプシーがあげられ、そのほかに周期性過眠症というものもあります。

可能性が高いと思われる患者様には、確定診断専門機関で1泊2日で行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と反復睡眠潜時検査(MSLT)が必要となります。当院には入院設備はありませんので、連携医療機関にご紹介させていただきます。

⑤むずむず脚症候群(レストレスレッグズ症候群)

「夜、布団に入ると脚がむずむずして落ち着かない」「脚を動かさずにはいられない」といった症状に悩まされてはいませんか?

これは「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」と呼ばれる病気で、日本国内の有病率は2%〜5%、人数にすると約200万人もの方々がこの症状によって生活の質を損なっていると推測されています。

特徴的な症状とサイン

この病気の最大の特徴は、ふくらはぎや太ももに生じる「表現しがたい不快感」です。患者様によってその感覚はさまざまで、「虫が這っているよう」「電気が流れている」「かゆい」「だるい」と表現されることもあります。

以下の4つのポイントに心当たりがある場合は、この疾患の可能性があります。

1.脚を動かしたいという強い衝動がある
2.じっとしている時に不快感が出現・悪化する
3.脚を動かす(歩く、さする等)と、不快感が軽くなる
4.夕方から夜にかけて症状が強くなる

発症しやすい方と主な原因

統計的には男性よりも女性に多く、特にお年を召した方や妊娠中の方に発症しやすい傾向があります。

はっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」の機能低下や、鉄分不足が深く関わっていると考えられています。また、一見似たような症状であっても、全く別の疾患が隠れているケースもあるため、慎重な診断が必要です。

治療へのアプローチ

治療では、不足している鉄分の補充や、ドーパミンの働きを助けるお薬、あるいは神経の過剰な興奮を抑えるお薬を用いる「薬物療法」が一般的です。

しかし、お薬に頼りすぎるのではなく、服用量を最小限に抑えながら生活習慣の改善などを組み合わせるアプローチが、長期的な症状の安定にはより効果的だと考えられています。もし脚の違和感で夜眠れない日が続いているのであれば、一人で抱え込まず、治療経験が豊富な睡眠専門医へ相談することをお勧めいたします。

⑥睡眠時随伴症(寝ぼけ、夢遊病、夜驚症、レム睡眠行動障害)

睡眠中に突然起き上がったり、動いたりしてしまう「睡眠随伴症」。その代表格である「レム睡眠行動障害」と「睡眠時遊行症(夢遊病)」は、どちらも寝ぼけたような行動をとりますが、実はその性質は大きく異なります。

ここでは、混同されやすい2つの疾患を見分けるための3つのポイントを解説します。

1.呼びかけた時の反応(覚醒しやすさ)
レム睡眠行動障害の場合、周囲が呼びかけたり刺激を与えたりすると、比較的スムーズに目を覚まします。一方、睡眠時遊行症は、強い刺激を与えてもなかなか目覚めることがありません。無理に起こそうとすると、かえって混乱して興奮してしまう場合もあります。

2.行動の特徴と怪我のリスク
レム睡眠行動障害は、夢の内容に反応して素早く激しい動きをすることが多く、自分自身や隣で寝ている方が怪我をしてしまうリスクが高いのが特徴です。
それに対し、睡眠時遊行症は「ゆっくりと室内を歩き回る」「トイレに行く」といった比較的穏やかな動作が主体です。周囲が下手に刺激をしない限りは、怪我に至るケースは少ないと言われています。

3.表情や寝言の様子
レム睡眠行動障害では、目は閉じたままですが、はっきりとした聞き取りやすい寝言を言うことが多い傾向にあります。一方で睡眠時遊行症は、目は開いているものの、つぶやくような不明瞭な寝言が多いという違いがあります。

正確な診断が適切な治療への第一歩

これらの症状は、ご家族の観察だけでは正確な区別が難しいことも少なくありません。しかし、専門の医療機関で睡眠中の脳波や身体の動きを記録する検査を行えば、どちらのタイプであるかを明確に特定できます。

タイプによって治療方針も異なりますので、「ただの寝ぼけ」と軽く考えず、症状が気になる場合はぜひ一度ご相談ください。

治療・支援

①薬物療法

当院における睡眠の薬物療法は、単にお薬を処方して「ぐっすり眠らせる」ことだけを目的とはしていません。かつての強い薬で強制的に眠らせる手法から、現在は安全性が高く、依存性の少ないお薬を用いて「適切な睡眠を確保しつつ、最終的にはお薬を卒業する」という、出口を見据えた治療へとシフトしています。

不眠症治療へのアプローチと薬剤の選択

不眠症の改善において、当院が最も大切にしているのは「お薬以外の選択肢」をまず検討することです。患者様の生活習慣や、睡眠に対する不安・考え方を丁寧にお伺いした上で、適切な「睡眠衛生指導」や、お薬に頼らない「不眠症の認知行動療法」をご提案します。

それでもお薬が必要な場合には、処方の優先順位を厳格に定めています。初めて服用される方には、自然な眠りに近く依存のリスクが極めて低い「オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラなど)」や「メラトニン受容体作動薬(ロゼレムなど)」を第一選択とします。これにより、身体への負担を最小限に抑えながらリズムを整えていきます。また、すでにお薬を服用されている方の場合も、現在の処方内容をより安全性の高い種類へと見直し、将来的な休薬に向けたステップを共に模索していきます。

過眠症における薬物療法の役割

日中に耐えがたい眠気が生じる「ナルコレプシー」などの過眠症と診断された場合には、お薬によって生活の質を劇的に向上させることが可能です。現在では、日中の覚醒を維持する「モディオダール」というお薬が主流となっており、これにより仕事や学習への支障を最小限に抑えることができます。また、眠気の背景にうつ症状や発達障害(ADHDなど)が関係している場合は、それぞれの根本的な治療薬を適切に選択し、多角的なサポートを行います。

安心できる「減薬・休薬」へのステップ

「睡眠薬は一度飲み始めたらやめられない」という不安を抱える方は少なくありません。かつて主流だった種類のお薬には、急に中断するとかえって眠れなくなる「反跳性不眠(はんちょうせいふみん)」という副作用があり、それが離脱を難しくしていました。しかし、2010年以降に登場した新しいタイプのお薬(メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬)は、この副作用がほとんどないため、比較的スムーズにやめていくことが可能です。

古いタイプのお薬を減らしたい場合には、まず「漸減法(ぜんげんほう)」という手法を用います。これは、調剤薬局で細かくお薬を分ける(分包化)などの工夫を凝らし、脳が気づかないほどわずかずつ、数週間から数ヶ月かけて量を減らしていく方法です。また、減薬の過程で一時的に新しいタイプのお薬を追加することで、睡眠の質を落とさずに依存性の高い薬から切り替えていく「置換法」も有効です。

こうした減薬や休薬を成功させるためには、お薬の調整だけでなく、正しい睡眠知識(睡眠衛生指導)の習得が欠かせません。当院では「非薬物療法」にも力を入れ、お薬に頼らなくても自分自身の力で眠れる自信を、一歩ずつ取り戻していただけるようサポートいたします。

②CPAP療法

中等症から重症と診断された睡眠時無呼吸症候群において、最も効果的で標準的な治療法とされているのが「経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal-CPAP療法)」です。

この治療は、就寝中に鼻へ専用のマスクを装着し、機器から一定の圧力を加えた空気を送り込むものです。この空気の圧力が、無呼吸やいびきの原因となる喉のふさがった部分を内側から押し広げ、空気の通り道を確保します。重要な点として、CPAPは視力を補う「眼鏡」のような役割を果たすものであり、数日間使用を中断すると気道の状態は元の無呼吸の状態に戻ってしまいます。そのため、毎晩の就寝時には継続して使用していただくことが大切です。

治療によって期待できる効果とメリット

多くの方は、CPAPを使い始めたその日からいびきが止まり、無呼吸が解消されます。その結果、朝の目覚めが驚くほどスッキリとし、日常生活に支障をきたしていた日中の激しい眠気も改善へと向かいます。

また、質の高い睡眠を維持することは、将来的な高血圧や糖尿病、さらには心筋梗塞や脳梗塞といった重大な合併症の予防に直結します。統計的にも、重症の無呼吸症候群を放置した場合と適切にCPAP治療を行った場合を比較すると、治療を継続している方の方が生存率が明らかに高まることが示されています。

当院における丁寧な導入とサポート体制

CPAP療法では、患者様一人ひとりに最適な「空気の圧力」を設定することにあります。遠隔でデータを入手し、睡眠中の呼吸状態を詳細に確認できますので、最も心地よく、かつ治療効果の高い圧力を調整いたします。
また、継続的な使用においてストレスを感じないよう、お顔の形にフィットする最適なマスクを選ぶことも非常に重要です。当院で提供するCPAP機器はレンタル制となっており、使用状況を無線で飛ばして記録する機器が内蔵されています。定期的な受診の際には、集められたデータを用いてご自宅での使用状況を分かりやすくフィードバックし、安心して治療を続けていただけるよう万全のサポートを整えています。

症状について

①入眠困難・起床困難

小中高生から入社数年目の若手社員の方を中心に、近年相談が増えているのが「朝、どうしても起きられない」という症状です。

起床困難に悩む方の多くは、大きな音で鳴り続ける目覚まし時計に全く気づきません。家族が何度も声をかけ、体を揺り動かして起こそうとしても、その記憶すら残っていないこともしばしばです。「起きなければならない」と誰よりも強く願い、努力を重ねているにもかかわらず、体が反応しない。その結果、学業や仕事に支障をきたし、社会生活が困難になってしまうのがこの症状の深刻な点です。

ここで何より強調したいのは、起床困難は決して本人の「気合不足」や「怠け」ではないということです。これは医学的なアプローチを必要とする状態であり、根性論で解決できるものではありません。ご本人はもちろん、お子様の様子に不安を感じている保護者の方も、決して自分たちを責めず、まずは専門家のもとへ足を運んでみてください。

背景にある現代ならではの原因

朝起きられない背景には、体内時計を乱すいくつかの現代的な要因が絡み合っています。

大きな要因の一つは、就寝直前までスマートフォンやパソコンの画面を見続ける習慣です。夜間にディスプレイから発せられる強い光(ブルーライト)を浴びると、脳が「昼間だ」と誤認して体内時計が後ろにずれ込み、自然な眠気が訪れなくなってしまいます。

また、近年の研究では、特性として何かに没頭すると時間を忘れてしまうADHD(注意欠陥多動性障害)などの傾向が、就寝時間の遅れに関係しているケースも指摘されています。このように、起床困難の裏には生活習慣や個々の特性が複雑に影響し合っているため、まずはその原因を正しく理解し、一人ひとりに合った改善策を検討していくことが大切です。

②中途覚醒・早期覚醒

私たちは本来、地球の昼夜のサイクルに合わせて眠り、活動しています。しかし、この「社会のリズム」と、自分自身の「体内時計のリズム」が大きくずれてしまうと、夜に眠ることができず、日中の活動に深刻な影響をきたすようになります。これが「概日リズム睡眠障害」です。

多様なリズム障害のタイプとその症状

この障害は、リズムがどのようにずれているかによって、いくつかのタイプに分類されます。

【睡眠・覚醒相後退障害】
睡眠の時間帯が後ろにずれ込み、深夜や明け方にならないと眠気が訪れません。

【睡眠・覚醒相前進障害】
逆に時間帯が前にずれ、夕方や夜の早い時間に強い眠気に襲われ、夜中に目が覚めてしまいます。

【不規則睡眠・覚醒リズム障害】
明確なリズムが失われ、1日の中で細切れに眠りと覚醒を繰り返すようになります。

【非24時間睡眠・覚醒リズム障害】
体内時計がリセットされず、毎日1〜2時間ずつ就寝と起床の時刻が後ろにずれていきます。

【交代勤務障害】
夜勤を含むシフト制の勤務により、眠りたい時間に寝付けない、あるいはすぐに目が覚めるといった不調が起こります。

【時差障害】
いわゆる「時差ぼけ」によるもので、急激な移動によって一過性の不眠や心身の不調が生じます。

【特定不能の概日睡眠・覚醒障害】
上記のいずれの型にも完全には当てはまらない、特殊な睡眠リズムの乱れを指します。

当クリニックでの治療アプローチ

治療においては、まず乱れてしまった体内時計を整えることが最優先となります。主にメラトニン受容体作動薬を中心とした処方を行い、必要に応じて睡眠薬など他の薬剤を組み合わせてリズムを調整していきます。
また、物理的に体内時計をリセットする「日光」を取り入れることも指導しつつ、健やかな睡眠リズムへの回復をサポートしています。

③日中の強い眠気

過眠症とは、夜にしっかり寝ているつもりでも日中に強い眠気が続く、あるいは異常に長い睡眠時間を必要としてしまう状態を指します。以前は、過眠といえば「睡眠時無呼吸症候群」がその代表格とされてきましたが、近年では現代人特有の「寝不足(行動誘発性睡眠不足症候群)」に起因するケースが非常に増えています。

このようなサインに心当たりはありませんか?

日常生活の中で、以下のような場面でつい眠り込んでしまうことはないでしょうか。

・テレビを観ているときや、読書をしている最中。
・車の助手席に乗って1時間も経たないうち。
・座って静かにしているときや、昼食後のひととき。
・友人と会話をしている最中や、運転中に信号を待ち。

こうした「通常なら起きていられるはずの場面」での居眠りは、脳が休息を求めているサインかもしれません。

過眠を引き起こす主な原因

過眠の背景には、大きく分けて「睡眠の質」と「睡眠の量」の問題があります。
「睡眠時無呼吸症候群」のように、睡眠中に呼吸が止まることで眠りの質が著しく低下する場合と、仕事や趣味のために単純に眠る時間が足りていない「行動誘発性睡眠不足症候群」の場合です。

また、より専門的な疾患として「ナルコレプシー」や「特発性過眠症」があります。これらは、脳内の神経伝達物質(オレキシンなど)の異常が主な原因と考えられていますが、中には発達障害に伴う生活のしにくさや、過度な気遣いによる精神的なストレスが眠気として現れるケースも少なくありません。

日本人に多い「行動誘発性睡眠不足症候群(寝不足)」

簡単に言うと「寝不足」です。大きな課題としては、本人が「自分は寝不足である」という自覚を持っていない点にあります。日本人は世界的にも短い睡眠時間であることが知られております。日本の成人平均睡眠時間は約7時間10分程度ですが、特に若い世代の方は「5、6時間寝れば十分だ」と考える傾向があります。この短時間睡眠では、実際には脳のパフォーマンスを保つのに十分な時間が確保できていません。
このような睡眠時間では深刻な睡眠不足状態に陥ることになります。

当院での治療アプローチ

自分の睡眠が足りていない場合が多く、その場合は睡眠不足の事実に気づくことが治療の第一歩となります。具体的には、一定期間、睡眠時間を意識的に1~2時間増やしていただき、日中の活動や眠気の変化を記録表につけていただきます。これにより、睡眠時間と自身のパフォーマンスの関連性を体感していただきます。時間が取れない方には、生活習慣の見直しや、周囲のサポートをどう受けるかを共に考えていきます。

ナルコレプシーや特発性不眠に対する強烈な「睡眠発作」への対処

ナルコレプシーは、10代で発症することが多く、自分ではコントロールできない強烈な眠気が突然襲ってくる「睡眠発作」が特徴です。また、感情が高ぶったときに体の力が抜ける「情動脱力発作」や、金縛り(睡眠麻痺)、寝入りばなの鮮明な幻覚などを伴うこともあります。

当院での対応

ナルコレプシーは、10代で発症することが多く、自分ではコントロールできない強烈な眠気が突然襲ってくる「睡眠発作」が特徴です。また、感情が高ぶったときに体の力が抜ける「情動脱力発作」や、金縛り(睡眠麻痺)、寝入りばなの鮮明な幻覚などを伴うこともあります。
可能性が高いと思われる患者様には、確定診断専門機関で1泊2日で行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と反復睡眠潜時検査(MSLT)が必要となります。
当院には入院設備はありませんので、連携医療機関にご紹介させていただきます。