こんなリスクがある
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- 交通事故を起こすリスクが7倍
- 血中酸素飽和度(SpO2)が約70%
- 日本の成人男性の4人に1人がSAS
- 1回の無呼吸で最長120秒間息が止まることも
- 高血圧や糖尿病のリスクが約2倍
- 夜間突然死のリスクが約2.6倍
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群は、大きないびきを伴い、睡眠中に呼吸が何度も停止する病気です。これは主に、空気の通り道である上気道が塞がってしまうことによって引き起こされます。しばしば「太っている人がなる病気」という誤解がありますが、そうとは限りません。
この病気の頻度は高く、総人口の約3%(男性では3〜7%、女性では2〜5%)が罹患していると推定されていますが、実際に治療を受けている方はそのうち10%程度に留まっています。
睡眠中の出来事であるため、ご自身で自覚するのは困難です。しかし、放置すると日中の強い眠気による交通事故や労働災害のリスクを高めるだけでなく、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、高血圧、糖尿病などの深刻な合併症を引き起こす危険性があるため、注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群の
セルフチェック
寝ているとき
- いびき
- 無呼吸・低呼吸
- 苦しくて目が覚める
- 夜間頻尿
- 寝汗が多い
朝起きた時
- 頭痛
- 熟睡した感じがしない
- 疲れが取れていない
- 頭が重い
- 口の中が乾燥している
日中
- 強い眠気・居眠り
- 倦怠感がある
- 集中力の低下
- ED(勃起不全)
なぜ気道が狭くなるのか?
健康な方でも、仰向けで寝ると重力の影響で舌や軟口蓋(口の奥の上部)が気道(空気の通り道)を狭めてしまいます。さらに、睡眠中は全身の筋肉の緊張が緩みます。
これに加え、気道が狭くなったり、塞がってしまったりする主な原因には、以下のようなものが挙げられます。
[筋力の低下]
加齢などによる舌や喉の筋肉の緩み
[肥満]
舌の根元に脂肪がつき重くなること
[形態的な問題]
顎が小さい/後退している、扁桃が大きい(扁桃肥大)、軟口蓋が長い
[口呼吸]
舌の位置が下がりやすく、気道を塞ぎやすくなる状態
閉塞型SASのリスク
急性期のリスク
頭痛 / 交通事故 / 倦怠感 / 集中力の低下 / 日中の眠気 / 記憶力の低下 / 作業ミスによる労働災害
慢性期のリスク
高血圧 / 夜間突然死 / 脳梗塞 / 糖尿病 / 認知障害 / 心不全 / 心血管障害 / 発育障害
合併症
睡眠時無呼吸症候群は、様々な合併症を引き起こすリスクがあり、その危険性は健康な方と比べて非常に高くなります。特に、日中の強い眠気は危険で、交通事故の発生率は健常者の約7倍にもなると報告されています。
代表的な合併症としては高血圧、多血症、不整脈、虚血性心疾患、心不全、脳血管障害、糖尿病、肺高血圧症、性機能障害などがあります。
睡眠時無呼吸症候群を放置してはいけない理由
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、放置すると寿命を縮めることが科学的に明らかになっています。
1988年に医学雑誌『CHEST』で発表されたカナダの研究(J. Heら)では、385人のOSAS患者が分析されました。その結果、1時間あたりの無呼吸が20回以上認められた重症の患者群では、8年後の生存率がわずか63%にまで低下していたのです。
これは、「治療を受けなかった重症OSAS患者(無呼吸回数20回/時間超)の3人に1人以上が、8年以内に命を落とした」という、極めて深刻な事実を示しています。
睡眠時無呼吸症候群の
2つの治療方法
スリープスプリント療法
軽症〜中等症
この治療法では、就寝時に専用のマウスピースを装着していただきます。このマウスピースは、下顎をわずかに前方へ突き出させるよう設計されています。その効果により、喉の空気の通り道(気道)が広がり、いびきや無呼吸の状態を軽減・緩和することが可能です。
保険の継続を可能にするため、連携歯科医療機関を紹介致します。
CPAP療法
重症
専用のマスクを使って気道内に加圧した空気を送り込むことで、空気の通り道が閉じてしまうのを防ぎ、無呼吸を取り除く治療法です。この装置は睡眠時間中のみご使用いただくため、日中の活動や生活に支障はありません。
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)とは
CPAP療法は、CPAP装置からホース、マスクを介して、処方された空気を気道へ送り、常に圧力をかけて空気の通り道が塞がれないようにします。
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)の効果
CPAP療法を正しく継続することで、睡眠中の無呼吸やいびきが軽減されます。その結果、熟睡感が得られ、朝の目覚めがすっきりするといった効果を実感できるでしょう。
治療を続けることで、日中の眠気の解消や、夜間に目が覚めてトイレに行く回数の減少など、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴う症状の改善が期待できます。さらに、血圧を安定させる効果も報告されています。
ただし、CPAPは「眼鏡」のようなものです。使用を中断すれば無呼吸は再び発生し、効果は得られません。また、装置に慣れるまでには2~3ヶ月程度の期間が必要となる場合があることもご理解ください。
CPAP装置の医療保険システム
CPAP療法は、事前の検査で定められた基準を満たした場合に、健康保険の適用を受けることができます。
保険適用を継続するためには、定期的な外来受診が必須です。受診時には、CPAPの使用状況や体調について主治医と相談し、装置の調整やアドバイスを受けながら、より効果的に治療を続けていくことが重要です。治療効果を維持するためにも、必ず定期的にご来院ください。
治療の流れ
STEP1
診察・問診
患者様ご自身が自覚されている症状や、気になること、お困りの点などを詳しくお聞かせいただきます。
STEP2
自宅での簡易検査
専用の検査機器をご自宅にお送りしますので、普段通りお休みになりながら検査を実施していただきます。これにより、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素濃度を正確に測定します。
検査機器はご自宅に配送され、検査終了後は着払いでご返送いただけます。
STEP3
解析〜再受診・診断
当院では、1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)を主な指標として、診断を行います。
なお、検査の結果「中等症」と診断された場合は、さらに詳細な判断のために精密検査(PSG検査)を受けていただく必要があります。
睡眠時無呼吸症候群治療の
料金(保険診療)
簡易検査(ご自宅)
※3割負担
約2,800円/回
精密検査(ご自宅)
※3割負担
約18,000円/回
CPAP治療
※3割負担
約5,000円/月
※諸費用含む
受診費用、機器レンタル費用(健康保険適用)、原則月1回診察

